すると突然。目眩のような感覚に襲われた。

(え……これって、まさか――)

 クラクラとして立っていられない。聞こえるのはやさしい波の音だけ。
 しゃがみこんだビオレッタは、とうとうおぼろげな意識さえ手放してしまった。






 ぽかぽかと晴れた、裏の畑。

「ラウレル、おかえりなさい」
「ただいまビオレッタ」

 道具屋の裏口で二人は抱き合い、軽くキスをした。足元では、じゃれ合う子供達が走り回っている。

「ピノが、ビオレッタは来ないのかってむくれていたよ」
「じゃあ次は私も行こうかな、この子達も連れて」
「喜ぶよ。ピノもこの子達も」
「やったあ、僕たちも小人に会える?」
「ああ、会えるよ――」

 
 
 


 瞼に光を感じたビオレッタは、ゆっくりと目を開けた。
 そこは先程と変わらぬ、グリシナの優しい砂浜だった。

(なに、今の……今のは……もしかして)

 これが噂の『予知夢』だとしたら……

 ラウレルと抱き合っていた。キスをしていた。足元には子供達。場所は見慣れた道具屋だった。

 すべて、彼が見たという予知夢と重なる。

(まさか、そんな、まさか……)



 これでは、頬の熱も冷めるはずがない。

 ビオレッタはしゃがみこんだまま、先程見た白昼夢を反芻していた。
 足元にはリヴェーラの石が、きらりと輝いていた。