「ビオレッタさん、いったい何を」

 困惑するラウレルが抵抗しないのをいいことに、彼を無理矢理ベッドに寝かせてブランケットを掛ける。
 あわてて起き上がろうとする彼を、ビオレッタは再び組み敷いた。

「ラウレル様、きっとお疲れなのです。私のために結局、休日も休めていません。私ったら浮かれて……一緒に住んでいるのに、気付かず申し訳ありませんでした」

 呆気にとられているラウレルを上から見下ろした。
 彼には、疲れている自覚は無さそう。心配だ。多分、このまま大人しく寝てはいないだろう。
 階下に降りれば、彼はまた皿洗いや掃除をしてしまうだろうから、夕飯も今日は部屋で食べてもらったほうが……
 


「……やっぱり、あなたは優しく美しい」

 的外れなことばかり考えるビオレッタの手首を、ラウレルが掴んだ。

 彼は大きな手でビオレッタの動きを封じたまま、こちらの瞳を見つめる。
 ビオレッタはやっと自覚した。この体勢がかなり大胆であったことに。

「俺は疲れていません。大丈夫です。ビオレッタさんが謝る必要は、ひとかけらもありません」
「でも……」
「考えていたんです。クエバの町でのことを」