「ビオレッタさん、何してるんですか?」
「あ、ラウレル様おかえりなさい」

 贈り物の扱いに悩みつつ片付けていたところに、ラウレルが帰ってきた。
 今日も村のみんなから仕事を頼まれては、あちこちで働いてきたようだ。

「昨日頂いた贈り物を整理していたのです。本当に珍しいものばかり頂いて……」
「確かドレスとネックレスもありましたよね? 時が来るまで大切にしまっておいてくださいね」
「え? ええ、もちろん大切にしますが」

(時が来るまで?)

 一体何の?
 よく分からないが、あれはラウレルが念を押すほど大切なものらしい。もしかすると、ビオレッタが想像する以上に高価なものなのかもしれない。

「それはそうと、お疲れ様でした。みんな次々と仕事を頼むから大変だったでしょう」
「いえ、そんなには。でも暑かったですね、ずっと太陽が出ていましたから……」
 
 仕事を終えたラウレルは汗だくだ。たった今も、彼の頬からは一筋の汗が流れ落ちた。よっぽど暑かったのだろう、よく見てみると服が汗で透けている。
 
「すごい汗……もしよろしければ、水浴びにでも行きますか?」
「水浴び?」
「暑い日は、皆よく海へ行きますよ。私も、砂浜くらいならご一緒に――」
「行きます!」

 ラウレルは食い気味に返事をした。
 ただ何気なく砂浜へ誘っただけなのに、なんて嬉しそうな顔をするのだろう。

「これはデートですね!」
「ち、違います。私は砂浜へリヴェーラの石を採取しに行くだけで」
「それでも、ビオレッタさんから誘ってくれるなんて嬉しいです」
 
 さっそく行きましょうと、ラウレルに手を取られた。
 彼はなんでも行動が早い。ビオレッタは準備をする間もなく、グリシナの浜辺へと出発したのだった。