ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~

 賑やかな楽器の音。人混みの喧騒。
 村とは違う熱気を感じる。

「ビオレッタさん。着きましたよ」

 転移魔法で、ものの数秒。
 ラウレルから呼び掛けられ、もう着いたのかと、ビオレッタは恐る恐る目を開けた。
 目の前に広がっていたのは……赤・緑・黄……極彩色の街。様々な旗が垂れ下がり、石畳の大通りに面して両脇にはズラリと店が並ぶ。

「……ここは」
「ここはプラドのバザールです。賑やかでしょう」

 あちこちで商人達の声が飛び交う。人が入れそうな大きな壺、見たこともない花、どう食べるのか見当もつかない野菜、あたりにたちこめるのは魅惑的な香のかおり……
 ここは夢の国だろうか。

「これは現実ですか」
「現実ですよ。ほら」

 ラウレルはわずかに腕の力を込め、ビオレッタをぎゅっと抱きしめた。ビオレッタはあまりの衝撃に忘れていたのだ、彼の腕のなかにいたことを。一気に、彼へと意識が集中する。
 
「わ、わかりましたこれは現実でした。離してください」
「ずっとこのままでもいいですよ」

 ビオレッタはあわててラウレルから距離をとった。顔が熱い。
 その時ちょうど、タイミング悪くビオレッタのお腹が鳴った。顔から火が出そう……とはこういう事をいうのだろうか…………

「朝食がまだでしたよね。あそこでなにか食べましょう」

 ラウレルは彼女の手を引いて、湯気が立ち上る屋台へと向かった。