陽菜(ひな)晴海(はるみ)が2月14日、どうしてるのか調べてこい」

 突然、部屋に入ってきた陽兄(ようにい)は私にそう命令した。

「ちょっと、女子高生の部屋にノックなしで入らないでくれます?」

 兄と言っても、本当の兄ではなく、同じマンションに住む1つ年上の幼馴染みで、血の繋がりはない他人である。
 そして晴海ちゃんは、これまた近所に住む幼馴染みで、陽兄と同じく1つ年上。学年が違う私にも優しい上に可愛い、自慢のお姉さんだ。

「はぁ? なんでだよ?」
「はー。そういうところがモテないんだよねー。さっきの2月14日だっけ? どうせ晴海ちゃんと一緒に帰ってたのに聞けなかったんでしょ?」
「うっ! うるさいな。男にはタイミングというのが、あって、だな……」

 陽兄は一瞬、大きな声が出しだけど、すぐにもごもご声になった。
 さっきまでの偉そうな態度はどこへやら。視線をうろうろとさまよわせた陽兄の姿はなんとも・・・情けない。
 胸の中がモヤモヤとした曇り空みたいな気持ちになる。