「仕事の話をすると、現実に戻されたみたいで嫌なのよ…。」

私と過ごしてる時間は、本当に嫌な事を忘れさせてくれるみたい。だからその時間を奪われるのが嫌で、仕事の話は避けていたらしい。

「家は…本当に散らかってるし。ボロアパートだから。近所付き合いもあまり良くないの。だから、もしアタシが海果ちゃんを家(うち)に招いたら、変な噂とか流れそうで…。」

オネェってだけで、周りは変な目で見てくるんだって。それで近所付き合いがあまりうまくいってないから、私が遊びにいく事で変な噂が流れたらと、気にしていたみたい。

「本当にごめんなさいね…ちゃんと言えば良かったわね。確かに最近、恋愛絡みの事件とか多いし、不安にもなるわよね…。」

「あ、ごめんなさいっ!私、嫌な話させちゃったよね…。」

勇里さんは私を責めなかった。「大丈夫よ。」そう言って優しく頭を撫でてくれた。