葵 裕輝


 初めて見た時に、強く惹かれた。
 佐原 智也。
 容姿とか雰囲気とか、確かにそれも魅力的だったけれど。
 人生の意味を見つけた気がした。
 好きになって、苦しんで、どうしようもなくなって、自虐的な気持ちで、僕は告白した。
 僕ほどに彼は僕のことを求めてないんだよって、疲労した自分に分からせるつもりでやった。
 でも彼は、承諾した。
 意味がわからなかった。
 だって、僕のこと、好きでもないくせに。




 好きになってくれるまで、気長に待つつもりだった。同性ってだけで障害は大きいし、何の取り柄もない僕だから。
 でも、恋人という関係は、それを許してはくれなくて。
 2人きりになると、いつも、早く抱かれろと、何かに急かされている気がしていた。
 気まずくて、僕は、つまらない話で場を持たせようとした。
 押し倒されたのは、もう、耐え切れなくなった夜だった。
「智也っ、も、やだ……っ!」
 良いって言ってるのに。
 本当に好きになってくれるまで、いくらでも待つのに。
「あっ、あ、やだあっ!」
 そう言いながら、遠慮しながら。
 過敏に反応してしまっている体が恥ずかしくて厭わしくて。
「嫌だ、やだってば! やだあ……ッ!」
 体の奥が熱い。
 自分のじゃない体温。
 激しい展開に思考が追い付かない。

 お願い。
 やめて。
 体だけの関係なんて嫌だ。
 ちゃんと愛してよ。
 それからにしてよ。
 ただの性欲処理なんて嫌だ。

 声にならない声をあげて、僕の意識は飛んだ。














 誰か助けて。
 僕らの関係。
 これからどうしたらいいの?
 答えてくれる人なんて、いない……