佐原 智也


 成り行き、だった。
 全寮制の男子高校に入学して、二ヶ月過ぎた頃。
 クラスメイトの葵 裕輝に、好きだと告白されて。
 その意味もよく解らぬまま、頷いて。
 恋人になった。
 正直、自分が本当に葵のことを好きなのかどうか、わからない。そう言われればそんな気もする、けど、それは、「恋人」とか「付き合っている」とかの事実に惑わされているだけかもしれない。
 触れる程度のキス。
 それより先に進むことって、あるんたろうか。
 自分はそれすらも、今と変わらぬまま、何となくで受け入れてしまうんだろうか。
 俺は、……………自分の気持ちが、わからない。



 きっと、葵も、それを知っている。
 だから葵は、絶対に聞かない。
 自分の事を、好きかとは。絶対に。



「智也」
 夜になると、葵は俺の部屋にやってくる。そして俺らは、消灯の時間まで、一緒に過ごす。
 面白い本を持ってきたり、新商品のお菓子を買ってきたり、何か話の種を、沢山手にかかえて。
 だけど、もう、それすらも間に合わない。
 空間が。
 部屋の雰囲気が。
 俺に葵を抱けと、催促する。
 ひとしきり笑ったあとに訪れる、沈黙。
 葵は、俺に無理はしないで欲しいと、いつも少し身を引いている。
 だけど、もう、間に合わないんだ。










「……智也?」
 上から葵を見下ろす。
 少し怯えたような瞳が、俺を見つめる。
 さっき、話が切れる前に俺は葵を押し倒した。
 奪うように口付けをする。
 微かな抵抗を示す、細い体。
 いつもとは違うキスに、葵は戸惑っているだろう。
 上半身に手をのばす。
 薄い服の上から胸の突起に触れる。
 首筋にキスをする。
「や、やだっ……智也!」
 爪を立てる。
「智也……っ!」
 荒い息で批難する葵の、ズボンのベルトに俺は手をかけた。













 葵は酷く濡れていて、嫌だと抗う涙目が嗜虐心を煽った。
 ああ、でも、やっぱりわからない。
 好きなんだろうか。


 葵はまだ泣いている……………