「貴美子、眠剤だって」

「どっちでもいい。むしろ、さっきの自動販売機の場所に行きたいんだけど」

「自動販売機!? またお茶飲むの? 貴美子」

「今度は違う! ジュース!!」

「ははははは」

「看護婦さん、笑わないで下さい」

「いいですよ。今夜最後に、一緒に自販機コーナー行って頂いて。帰って来て、買って来た物冷蔵庫に入れてもらったら、親御さんには一旦帰ってもらうように」

「悪いですね。」

「いいんだよ、お母さん」

「じゃあなるべく早めに。申し訳ありません」

夜の病棟の廊下に、車椅子と
痩せ細った女性。
痩せ過ぎている割に、口だけは達者だ。

何だかジュース飲みたい

「葡萄ジュース。右のやつ」