そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 二人の会話を黙て聞いていた私だけれど…。

 私は楓のように褒められる仕事をしているだろうか?
 そう思うと落ち込んでしまう。

 むしろ飯倉さんの足手まといになってやしないだろうか?

「営業には営業の難しさ、法務には法務の難しさがあるわ。比べることは出来ない。自分の仕事を極めることが大切だと思うの」

 営業がなくなれば会社に仕事が回ってこない。つまり私たちも仕事が無くなる。けれど営業にとって法律は専門外。法務がなければ、とんでもない契約をしてしまう。

「どちらも大切。私に営業しろと言われても絶対無理。適材適所ってあるわよね」

 飯倉さんは肩をすくめる。

 適材適所か。

「私も法律は苦手かも。ややこしい言い回しとか多いし。営業が向いてる気がします。それに色んな人と話すの好きだし」
「そうね」

 楓に笑顔を向ける飯倉さんは綺麗だった。

「吉永さんも、あまり気にしないで頑張って。あなたにはじっくり考える法務が向いているわ」
「それじゃ、まるで私がじっくり考えてないみたいじゃないですか」

 ぷうっと頬を膨らませたのは楓だ。

「違うの。営業はスピードも大事でしょ?けれど、法務にスピードは必要ない。腰をすえて考えるのが大切だと言いたかったの」

 まるで私の心を見透かしたような飯倉さんの言葉に、無言で頷いたのだった。
 
 飯倉さんは本当に、最高の上司だ。
 部下のことを良く見ているしアドバイスもさりげなく、タイミングもばっちりだもの。