そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

「おはようございます」

 私はダイニングテーブルの上に焼けたばかりの、鮭が乗ったお皿を置いた。

「いつの間にか眠っていたみたいだ。このブランケットは美里が?」
「はい。春とは言え少し寒かったから」

 涼介さんの顔をまともに見れない。
 誤魔化すようにお味噌汁をよそう。

 彼は慣れているかも知れないけれど、私にとってはファーストキスだった。
 いい年をしてと言われてしまうかも知れないけれど、恥ずかしいものは恥ずかしい。

 でも、ファーストキスが涼介さんで良かったと思う。
 私はそっと自分の唇に右手の人差し指を添える。
 昨夜の出来事を思い出すように。

「いい匂いだね」
「ひゃっ」

 肩越しに彼の顔が。

「おどかさないで下さいっ。こぼすところでした」
「ごめん、ごめん。これは俺の分?運ぶよ」

 お味噌汁をよそったお椀を私の手から奪う。

 良かった。いつもの涼介さんに戻ってる。

 彼はまるで何事も無かったかのように、食事をして出社して行った。

 何か言ってくれるかと思ったけれど、これで良かったのだとも思う。

 だけど、期待していいですか?
 あなたも私が好きだって思っていいですか?

 けれど。と、思い直す。
 彼は言ってくれない。
 私を彼女だと。
 
「やっぱり(仮)だよね」 

 信じられないくらい、時間が経っていた。

「うじうじ考えててもいいこと無いって!」

 自分に言い聞かせるように言って、出社準備に取り掛かる私だった。