そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 その日の夜──。

「秘密厳守だから詳しくは話せないけど、例の大手は切る」

 楓が担当してた会社だ。

「良かった。これで楓も安心して仕事が出来ます」
「彼女は優秀な営業みたいだね。我が社としても、優秀な人材を失わずに済んだ」

 驚いたことに、相談はこの日だけで十件はあったらしい。

「見えて無かったことが多すぎた。反省しないといけないな」

 涼介さんはきゅっと唇を噛んだ。 

「どこかで聞いたセリフのみたいだけど、社員は宝物だからね」
「はい」
「ありがとう美里。君のお陰だ」
「そんな、私は楓を助けたかっただけで…」
「その気持ちが会社を救ったのさ」

 彼は口元を緩めた。

「もっと環境を良くして、離職率ゼロにしたい」
「そうですね。出来れば素敵です」

 ゼロは無理でも、それに近づければ最高の会社になる。
 涼介さんならそれが出来そうな気がした。

「ところで美里」

 涼介さんはソファーから身を乗り出すと、ガラステーブルを挟んで座る私を見据えてきた。

 な、何?
 私は身構える。

「どうしていつも敬語なわけ?」

 突拍子もないことを言われるかと思ったから、ほっとしてしまう。

「それは、涼介さん社長だし、年上だし」
「何か忘れてないかな?」