そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 涼介さんは駅前の噴水のヘリに座って足を組んでいた。
 私を見つけると、スッと立ち上がる。

「どうしたんですか?こんなところで」
「どうしたって、君を待っていたに決まってる」
「あっ、ごめんなさい」

 遅いと言ってもまだ零時前。
 社会人にとっては、そこまで遅くないはずなのだけれど。

「この辺りは、遅くなると人通りが無くなるんだ」

 確かに駅を降りたのは私一人だった。
 駅の南側はオフィスやショッピングモール。ホテルを利用する人はタクシーを使うし、駅の北側は高級住宅街。徒歩で帰る人はまずいない。

「心配してくれたんですね。ありがとうござい──」

 言い終わる前に涼介さんは私の手を握る。

「行こうか」

 行こうか?
 帰ろうか。じゃなくて?

「櫻坂の桜が満開なんだ。美里にも見せたくて」

 櫻坂は、べリが丘駅から北に向かってノースエリアの高級住宅街までの道のこと。

 ちょっと歩くとすぐに桜並木が見えてきた。

 桜の開花時期は短い。雨や強い風ですぐに散ってしまう。

「この時期を逃すと、また来年だから。そうなる前に美里と来たかった」

 ライトアップされた桜はほんのり紫に見えて幻想的だ。

「すごいっ」
「だろ」

 時折吹く柔らかな風に乗って、花びらが舞う。

「昼間は花見客で混雑してるけれど、夜は独り占めだ」

 確か、間宮さんが涼介さんの実家はこの先のエリアにある、高級住宅街だと言ってたっけ。

「涼介さんはこの桜を見て育ったんですね」
「ああ」