そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 楓は深い意味があって言ったんじゃないことくらい分かってる。

 でもちょっぴり傷ついたのも事実。

「営業のみんなが頑張ってるから、そうでない私たちのお給料が出てるんだよね」 
「ごめん。そんなつもりで言ったんじゃないんだけどさ」 
「分かってるよ。だけど、営業さんが稼いでくれなくちゃ、うちの会社はつぶれちゃうもん」

 営業は成績がすべて──。
 
 頭では分かっていたけれど、そこまで過酷だとは思いもしなかった。
 そう言えば楓、少しやせたみたい。

「ごめんね、楓の気持ち理解しないで、簡単に代わってもらえば。なんて言っちゃって」
「…仕方ないよ。仕事が違うんだし」
「もしかして、転職考えてるの?」
「…今の仕事はやりがいもあるし、結果が出れば頑張る原動力にもなるんだけど。万が一、今のお客さんが上手く行ったとするでしょ?でも次もこんな客だったらと思うと気が引けるのも事実」

 営業部に女子は少ない。
 先輩や同期は仲間だけれど、ライバルでもあるから中々相談もしづらいらしい。
 
 楓を助けてあげたいけれど、私は法務部だし、平社員。
 何も出来ないことが分かっているから、悔しくて悲しい。

 こんなことで頑張っている楓にやめて欲しくない。

「あたしも自分が大事だから、最悪今回の商談落としてもいいとは思ってるんだけど」
「うん。そうだよ。自分を大切にしなくちゃ」
「ありがと、美里。話したら少しすっきりした」

 私なんて全然役に立ってない。
 
 楓を救う方法は──。


 ◇

 楓と別れてツインタワーへの帰り道。

「随分遅かったね」

 べリが丘駅を降りた私に声を掛けてきたのは涼介さんだった。