そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

「かんぱーい!!」

 ガチンとビールジョッキがぶつかる。

 上品なグラスより、こっちのほうが私は落ち着くみたい。

 ホッケの開きに、揚げ出し豆腐。お通しの白和えはちょっぴり甘い味付けで美味しい。
 目の前に置かれたから揚げは熱々だ。

「から揚げは熱いうちにね~。うんおいしぃ~。この油が何とも言えないっ」
「このちょっと悪い油が恋しくなる時あるよねっ」
「うんうん」

 一口食べて、ビールを流し込む。

「ずっと忙しくて楓とは飲みに来れなかったよね。今のお客さん大変なの?」
 
 すると。

「もー、営業なんて辞めたいっ」

 以外な答えが返ってきた。
 ちょっと前までは、色んなお客さんと会えて、営業が楽しいと言っていたのに。

「そんなに忙しいの?」
「っていうかさ」

 今担当している客先に面倒な人がいるらしい。

「でね、そいつさぁ、断ってもしつこく誘ってくるわけ」
「それって、やばくない?」
「一緒に飲みに行ってくれたら、おたくの会社を採用してあげるよって言いやがるの。信じられる?」

 そんな奴に限って、約束を守らないに決まっているし、そもそも客の立場を利用して相手に交際を迫るなんてパワハラじゃない。

「事情を話して、担当代わってもらえば?」
「そうしたいんだけど、相手は大手でさ」

 営業は実績がすべてだと楓は言う。

「他の人に取られるのも嫌なんだ。これが取れれば、数十億の売り上げになるから次の査定にも影響するし、大型契約は転職の実績にも有利だしね」

 楓はビールのお代わりを注文する。

「実績と関係ない仕事をしてる、美里が羨ましいよ」