そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 掃除、洗濯、食事の支度。

「全部、自分でやらなくちゃでしょ?吉永さんはそれを学生時代からやっているのよね。偉いわ」
「偉くなんてないですよ。仕方なしにです。飯倉さんのほうが仕事も忙しいしむしろ、それそこなしているんだからすごいですよ」
「こなしているはずないじゃない。ほとんど外食だし、掃除も洗濯もハウスキーパーさんにたのんでるの。そうねぇ。時間配分を考えるようにはなったかな。少しは花嫁修業になるかしらね」

 飯倉さんはケラケラと笑う。
 
 花嫁修業…。
 何気ない言葉が私の心に重くのしかかる。

 涼介さんとの暮らしが、彼と結婚するための花嫁修業だったらいいのに…。

 いつの間にか私は、とてつもない夢の中にいたのだった。


 ◇

 退社時間が迫ったころ、スマホが震えた。

『久しぶりに早く終わりそう。たまにはどう?』

 最後にはおちょこと徳利のスタンプが押してある。

 同期の楓からだ。

 えっと、今日は──。涼介さんは取引先の銀行との食事会があるから、夕食はいらない。
 それでも一応彼に連絡してみる。すると。

『行っておいで。だけど、あまり遅くならないように』

 との返信が返ってきた。

 楓にOKのスタンプを送ると、私は急いで仕事を片付けたのだった。