願わくば、誰にも会わないことだけ。
ほとんどの社員がモノレール通勤だし、徒歩圏内は私の知る限りでは間宮さんと飯倉部長くらいだから。
「きっと平気よね」
などと、高をくくっていたのだけれど…。
「あら?吉永さん?」
ドキっとして振り向くと、飯倉さんだった。
もしかして、この近くに住んでいるの?
それとも彼女もツインタワーの住人だったりする?
「珍しいわね。どうしたの?」
実はこんな時の言い訳は考えてある。
「お天気が良かったので、健康の為に歩こうと思って、ひと駅早く降りたんです」
「あら。健康は大事だものね。いい心がけよ」
良かった。バレてないみたい。
「飯倉さんはこの近くにお住まいなんですか?」
「そうね、少し離れてはいるけれど、最近サウスエリアに出来たマンションに住んでいるの」
「えーー、すご~い。だってあそこ億ションですよね?」
「実はね、恥ずかしながら親に出してもらったの」
やっぱり飯倉さんもお嬢さまだった。
「実家暮らしが長いから、婚期が遅れるんだろうって、親がね」
う、羨ましい。
「親に追い出されるとか、笑っちゃうわよね」
「羨ましすぎですよ。私もお金持ちの親が良かった」
すると飯倉さんは反論するような顔をする。
「お金なんて関係ないわよ。あなたの顔を見れば、幸せに育ったってわかるし」
「私が?」
「そうよ。きっと素敵なご両親だったのでしょう?」
うちは普通のサラリーマン家庭。
裕福では無かったけれど、優しいお父さんと、お母さん。
悪いことをしたら、すごく怒られたけど、小さなことでは怒らなかった。
一人っ子の私は、小さい時にピアノを習いたいとごねたことがあった。ピアノは高価だし、共働きの家庭だったから、きっと無理をしてくれたのだろう。
一週間後には家に立派なピアノがあったっけ。才能がないことが分かって、大学に上がる時にレッスンは辞めてしまったけれど。
大学進学で東京へ出て来た時だって、地元を離れるひとり娘を快く送り出してくれた。
「吉永さんは独り暮らし長いのよね?」
「あ、え、まぁ…そうですね」
「独り暮らしをして初めて分かったわ、親のありがたみ」
ほとんどの社員がモノレール通勤だし、徒歩圏内は私の知る限りでは間宮さんと飯倉部長くらいだから。
「きっと平気よね」
などと、高をくくっていたのだけれど…。
「あら?吉永さん?」
ドキっとして振り向くと、飯倉さんだった。
もしかして、この近くに住んでいるの?
それとも彼女もツインタワーの住人だったりする?
「珍しいわね。どうしたの?」
実はこんな時の言い訳は考えてある。
「お天気が良かったので、健康の為に歩こうと思って、ひと駅早く降りたんです」
「あら。健康は大事だものね。いい心がけよ」
良かった。バレてないみたい。
「飯倉さんはこの近くにお住まいなんですか?」
「そうね、少し離れてはいるけれど、最近サウスエリアに出来たマンションに住んでいるの」
「えーー、すご~い。だってあそこ億ションですよね?」
「実はね、恥ずかしながら親に出してもらったの」
やっぱり飯倉さんもお嬢さまだった。
「実家暮らしが長いから、婚期が遅れるんだろうって、親がね」
う、羨ましい。
「親に追い出されるとか、笑っちゃうわよね」
「羨ましすぎですよ。私もお金持ちの親が良かった」
すると飯倉さんは反論するような顔をする。
「お金なんて関係ないわよ。あなたの顔を見れば、幸せに育ったってわかるし」
「私が?」
「そうよ。きっと素敵なご両親だったのでしょう?」
うちは普通のサラリーマン家庭。
裕福では無かったけれど、優しいお父さんと、お母さん。
悪いことをしたら、すごく怒られたけど、小さなことでは怒らなかった。
一人っ子の私は、小さい時にピアノを習いたいとごねたことがあった。ピアノは高価だし、共働きの家庭だったから、きっと無理をしてくれたのだろう。
一週間後には家に立派なピアノがあったっけ。才能がないことが分かって、大学に上がる時にレッスンは辞めてしまったけれど。
大学進学で東京へ出て来た時だって、地元を離れるひとり娘を快く送り出してくれた。
「吉永さんは独り暮らし長いのよね?」
「あ、え、まぁ…そうですね」
「独り暮らしをして初めて分かったわ、親のありがたみ」


