楓は急にぐっと身を乗り出して来た。

 な、何っ?

「でもさ、社長とお近づきになれたわけでしょ?」
「まさかっ!一度話しただけだからっ」
「はっ?なんで慌てるわけ?」

 しまった。
 この子、察しがいいのか、ただの偶然か? 

「とにかく一度呼ばれただけだから」
「もう会わないの?」
「さ、さぁ。きゅ、急にフットサルの話がしたくなったら呼ばれるかも」

 しどろもどろの私に不審な視線を向けて来る楓。

「やっぱ、怪しい」

 うわー。
 どうしよう。
 仕事をしている時より今のほうが頭が回っている気がする。

「違うって。だからね、サークルの親睦会で会うかもって一瞬考えて、それで…。それにさ、間宮さんがいるんだよ」
「あー、あの社長夫人第一候補の完璧美人ね」

 間宮さんがいるから何も無いし、近づけない。と私は楓を説得したのだった。