そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 阿久津社長と変な契約を結んでしまってドッと疲れてしまった。 
 社長と対面した気疲れもあるけれど、余計なことに神経をすり減らしたこともあるし、飯倉さんの反応も心配だった。

「この後仕事できるかな」

 エレベーターを降りて、恐る恐る法務部に戻ると、席にいたのは飯倉部長だけだった。

 壁の時計の針は六時半を過ぎている。
 定時を回っていた。

「どうだったの?社長の呼び出し」

 席を立った飯倉さんは私に缶コーヒーを差し出してくれた。

 板倉さんはT大法学部出身のキャリアウーマンだけど、怖かったり性格がきつかったりが全然ない人だ。
 すごく綺麗で優しいお姉さんって感じ。

「どうしたの?私の顔をじろじろ見て。何か付いてる?」
「あ、いえ…すみません」

 こんな綺麗な人なのに、彼氏募集中って言うのが信じられない。

 私は受け取った缶コーヒーのプルタブに指を掛けた。
 
 心配して待っていてくれたのかな?コーヒーまで用意してくれて。
 
 飯倉さんが選ばれていれば…。
 性格だって最高だし、美男美女のカップルだったのに。
 (仮)じゃなくて、本命の彼女になっていたはずなのに。
 
「……ごめんなさい」

 思わず漏れた言葉。

「えっ?どうして謝るの?社長に怒られるようなことしたの?」

 私は無言で首を振った。

 あの日、私は飯倉さんと仕事上の面談をしていた。
 お昼になって二人で社食に行って…。

 お昼には少し早かったから食堂は空いていて、だから阿久津社長がどれを選んでも一番の女性にはなれたはずだったのだけれど…。
 どうして”うどん”なんですかっ!?社長!!!!