そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

「ひとり目だ」

 またまたご冗談をって、う…そ。
 いきなりこのレベルからですか?

 阿久津社長ほどの人が、最初に私からスタートしたとは思えないのだけれど。

「ま、ま、まっさか~ぁ。私を傷つけないためにそんなこと」

 冗談めかして言ってみたのだけれど。

「本当だ。君が最初だ」
「り、理由をうかがってもいいですか?」

 あり得ない。そんなの信じない。
 阿久津社長ほどの人が、地味で平凡な私を彼女(仮)に選ぶなんて冗談としか思えない。

 これは悪い夢だ。
 私をおとしめる罠かも知れない。

 最近は雇った社員を簡単に辞めさせられないから、罠にかけて辞めさせるとか?

 法務部で働く私は、コンサルティング契約をした相手との契約書の作成が主な仕事だ。
 …会社に不利益なことしたっけ?

 入社したころはミスも多くて上司である飯倉さんからよく怒られていたけれど、最近ではほとんどそれも無い。

 まさか、あれ?

 サウスエリアのショッピングモールでお財布を拾ったことがあった。中にはお札がぎっしり入っていたけれど、一枚も抜き取らずにちゃんとそのまま届けた。
 まさか、持ち主が、一枚足りませんとか言った?

 それとも……?