そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 えっ!?
 えーーーー!?
 
 聞き違い……だよね?

 唖然として言葉もない。

 私たちの間には重い空気が漂っているようだった。
 
 深い、深い沈黙。
 窓の外では、べリが丘ツインタワーの灯りがチラホラ灯りはじめていた。
 右側がオフィス棟と展望台。左側が住居棟だと聞いている。

「突然のことで驚いたよね」
 
 唐突にあり得ないことを言われれば、だれでも驚くに決まってる。
 何も言わない私に対して当然の反応を彼は示した。

「無理にとは言わないけれど、親を安心させるために君に協力して欲しいんだ。彼氏がいるかどうか聞いたのもその為だった。それに今は仕事も大事な時なんだ。結婚なんてしている場合じゃない」

 それで…。
 そこに関しては分かったけれど、どうして私なの?
 身近にいる、しかもすごい美人の間宮さんにすればいいのに。
 阿久津家の先祖は武家だったと聞く。間宮家は旧華族だとか。

 どう考えてもそちらの方がお似合いだし、見た目だってイケメンの阿久津社長と超美人秘書。
 私では絶対に釣り合わない。そう伝えたら。

「ルナか?」

 闇の中で彼は小さく笑った気がした。

「ルナは無理だ。あいつとは小さい頃から良く遊んでいたし、どうしても妹と思ってしまう。それ以上の感情は無理だ」

 二人は幼馴染だったんですね。

「私は無作為に選ばれたってことですか?」
「…すまない」

 彼がいたらまた別の女性を選ぶ。そんな感じなのかも。
 
「ちなみに…私は何人目の候補だったんですか?」

 どうしてそんなことを聞いたのかは自分でも分からない。
 最初は綺麗な子をターゲットにしていたに違いないはず。けれど、綺麗な子たちには彼氏がいただろうから、徐々にレベルを下げて私になった。なんてオチを自分で聞きに行くなんて、はは、馬鹿みたい。