そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 彼女が選んだのは、べリが丘グランドホテルの隣にある喫茶店だった。

 お互いに注文を済ませた。が、間宮さんは黙ったきりだ。

 ほどなくして、紅茶が運ばれてくる。

「どうぞごゆっくり」

 頭を下げる店員さんを私は無言で見送った。
 
 賑やかな店内で、明らかに私たちは異質だろう。
 下を向いたまま、口を開こうとしない彼女。
 
 ここだけ時が止まっているようだった。 
 
 私は間宮さんが口を開くのを辛抱づよく待ち続けた。
 
 隣のお客さんが入れ替わる。
 目の前の紅茶はとっくに冷めてしまった。

「代わりをお持ちしましょか?」

 お店の人に声を掛けられたけれど、私はそれを断る。

 隣の人の会話からすると、ここは紅茶で有名なお店らしいけれど、私たちはお茶を飲みにきたのではないのだから。

「ありがとうございます。このままで大丈夫です」

 せっかくの紅茶を飲まない女子二人に、やや不審顔の店員さんだったけれど、無言で頭を下げると私たちの席から離れて行った。

「あの──」