そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 すると、彼のスマホが震える。

「ルナからだ。今マンションの下にいるそうだ。美里と話がしたいって」

 嫌な記憶が蘇ると、吐き気がしてくる。

「俺が行って話をしてくるよ」

 私は無言で首を振る。

 私を陥れた彼女と会うのは正直不愉快でもあるし、また同じことをされたらと、怖くもなる。
 だけどこれを乗り越えなくちゃ、私はこれからも忌まわしい記憶に怯えて生きていかなくてはならない。
 そんな気がした。

「行ってきます」
「俺も行くよ」
「多分平気です。まだ時間も早いし、人が多い所で話しますから」
「じゃあ何かあったら、すぐにスマホで連絡できるようにしておけよ」
「はい」

 そうは言ったものの、やはり不安を抱えて私はエレベーターを降りた。

 エントランスホールのソファーに間宮さんはいた。
 背中の中ほどまであった髪は短く切られていたし、染められていた髪色も黒くなっている。

「退院したって聞いたから」

 私は反応出来ないでいる。
 さっきから心臓は不快な音をたてて激しく動いている。
 彼女の顔を見た途端、胃の奥から食べたものが逆流しそうだった。
 
 唾を飲み込んでなんとかそれを抑える。

「外で話せないかな」
「喫茶店なら」

 頷くと、間宮さんは歩き出した。