そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 とても言いづらいことのように見えた。

「親にいい歳をして、いつまで独身貴族を気取るのかって責められてね」

 はい?
 てっきり仕事関係の話だと思っていたから拍子抜けしてしまった。

 阿久津社長はたしか三十二、三だったはず。別に結婚を急ぐ歳でもないと思うけれど。

「俺としては結婚に対して興味がないわけじゃないんだ。だけど仕事も忙しいし、後回しにしてたって言うか。まぁ、面倒くさいと言うか」

 はぁ…。

「親にはずっと嘘をついていてね。その…付き合っている彼女がいるって」

 彼はため息をついた。

「その架空の彼女との結婚も考えていて、一緒に住んでるとも話したわけ」
「…はい」

 対応に困る。

「いずれ紹介するから、もう少し待ってくれって言って納得してもらったんだけど…」

 急いで彼女をつくる必要に迫られたそうだ。

「それで…」

 阿久津社長は言葉を濁す。
 
 夕日は落ち、部屋は薄暗い闇に支配されようとしていた。

「あの、電気つけましょうか?」
「いやいい。君の顔が見えない方が話しやすいから」

 それって、私が美人じゃないからですか?
 …なんてついつい自虐的なことを考えてしまう。

「吉永さん、俺の彼女になって欲しい」