そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 随分寝てしまったようだ。
 目を開けると、そとは暗い。
 
 子供の声も聞こえない。

 体を起こそうとするとやっぱり痛みが走った。

「痛いっ」
「えっ?」

 ベッドの隅で顔を伏せて寝ていた涼介さん。

「無理に起きないほうがいいい。打撲は安静が一番らしいから」
「ちょっとだけ起きるの手伝って」

 彼は私を支えて起こしてくれると、腰に枕を当ててくれた。
 彼の胸が背もたれ代わり。

「辛くない?」
「はい」
「美里が無事で本当に良かった」

 彼の唇が私の髪に触れる。

 あの時はどうなるかと思った。
 あいつらにやられてしまうことも覚悟したけれど。
 本当に何もなくて良かった。
 こうして涼介さんの体温を感じていられるのだもの。

「喉がかわいちゃった」

 すると、彼は手を伸ばして床頭台から吸い口を取ってくれる。

「本当は口移ししてあげたいんだけど、唇が腫れてるからこぼしそうだ」

 もうっ、こんな時まで。
 でも、やっぱりトクンと心臓が鳴る。
 きっと私もそうして欲しいと本当は願ってるからだ。

 彼は唇の隙間から吸い口の先を入れてくれる。

「はい」

 コクコクと喉を流れる水を飲む。

「ありがとう」
「どういたしまして」

 ちょっとの動作ですごく疲れてしまう。
 彼の胸に顔を埋めた。

「横になる?無理しないほうがいい」
「少しだけ、こうしていたい」 

 涼介さんの胸は大きくて暖かい。
 いつも私を優しく包んでくれる。
 そんな彼に甘えられる私は幸せで。
 その陰にいる人を思うと、やっぱり辛い。
 それは決して優越感なんかじゃない。
 彼を想う気持ちが痛いほど分かるから。

「──ごめんね」
「誰に謝ってるの?」
「ううん」

 誰でもないと首を少しだけ動かした。

「ルナだね」

 私は無言だ。

「美里、よく聞いて」

 人の幸せを妬む人間はいくらでもいる。
 実際、誰かの幸せの陰で泣いている人も沢山いる。

 そんな人達に対して、俺たちはどうすることも出来ないんだ。
 自分で幸せを見つけるしか、無いんだよ。
 それが出来ない人に対して、俺たちは責任なんてない。

 静かに彼は話してくれた。

「冷たいかもしれないけど、仕方がないことなんだ。分かるよね。だから美里がルナに罪悪感を持つ必要なんてないんだ」