そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 明るい陽射しが私を眠りから呼び起こしてくれたのは、事件の一日後だった。

 白い天井、白い壁、白いカーテン、そして白い服の人。

「気がついた?」

 そして、聞き覚えのある声。

「こ、こは?」
「病院だよ」
「涼介…さ、ん」
「良かった、気がついて」

 彼は私の髪を優しく撫でる。

「ここは冬子(とうこ)の両親の病院」

 あ、飯倉総合病院。

「彼女のお母さんが美里の主治医なんだ」

 確か副医院長で、整形外科が専門だったっけ。

 体を起こそうとしたら、全身に痛みが走った。
 顔もすっごく痛い。

「全身打撲。顔も腫れてる」

 はぁ、あの時、間宮さん死ぬほど私を叩いたもんね。

「まだ、動かないほうがいい」

 左手には点滴のチューブが刺さっていた。

「ごめん」涼介さんの表情は苦しそうだ。

「どうして?どうして涼介さんが謝るの?」
「君を守れなかった」

 それは仕方のないこと。
 あなたは間宮さんの行動まで把握できないのだから。

「ルナの行動を警戒はしていたんだ。だけどまさかあんなことをするとは思わなくて」

 涼介さんは間宮さんを解雇出来なかった。
 それは幼馴染でもある彼女への温情。
 それが仇になってしまったのは残念だったけれど、もういいの。

 それはあなたの責任ではないわ。

 あなたの気持ちを察することの出来なかった、間宮さんのせいだもの。

「私は無事です。彼女にたくさん叩かれたくらい。本当に何も無かったの。多分間宮さんも」

 髪に口づける彼。
 何も言わないけれど、涼介さんの表情から言いたいことは分かるつもり。

「美里が気がついたら、ナースステーションに声を掛けるように言われているんだ」

 無言で頷く私の髪をもう一度撫でて、涼介さんは病室を後にした。