そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

 いつの間にか、夕日が室内に差し込んでいた。

 私が呼ばれたのは午後二時くらいだったから、かれこれ二時間くらい訳の分からない茶番をしていたことになる。と言うか、茶番に付き合わされていたのだった。
 
 飯倉さん怒ってないかな?
 一瞬不安になったけれど、社長の呼び出しでどんなに時間を割かれようとも、怒られることはないはず。と、思い直す。

「やっと静かになったね。座って」

 先ほどと同じように阿久津社長はソファーを勧めてくれる。
 
 ゆっくり座ると、彼がことの顛末を教えてくれたのだった。

「君には本当に申し訳なかった。賭け事でも何でもないんだ。こんなことに君を巻き込んでしまったことは謝る」

 深々と頭を下げられて、さっきまで怒っていたことが大人げなかったと急に恥ずかしくなり、かてって恐縮してしまう。

「そもそも間宮が口を出さなければ、ここまで面倒なことにはならなかったんだけど。……人のせいにするのは良くないか」

 恥ずかしそうに彼は頭をかく。
 
 社長がそう言いたい気持ちは分らないでもなかった。
 間宮さんに出て行って欲しいと言ってもかたくなに拒むし、会話の内容を聞きたがるし。
 
 やはり、二人は付き合っているのだろうか。でないとあそこまで強く出ることなんて出来ないと思う。
 
 阿久津社長は冷めたコーヒーを口に含むと、話を始めたのだった。

「実は私事で本当に申しわけないんだけど」一度言葉を切る。