そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

「美里を初めて見たのは、そう、例のブルーローズだった。得意先の接待で行った時のこと──」

      ◆
 
 数か月空席だったピアニストの席に、新しいピアニストが入ったとママが教えてくれたのだった。
 
『中々ピアニストが決まらなかったんだけど、いい子が入ったのよ』
『へ―どんな子?ママ、音楽に関しては厳しいからね』
『音大じゃないんだけど、いい音を出す子なの』

 現れたのは、どこかあか抜けない雰囲気の()だった。
 ぶかぶかのドレスを見て、ああ、貸衣装なんだと思った。
 緊張のせいか、台に上がる時つまづいたり、楽譜を落としたり。
 
 この娘大丈夫か?と思ったよ。

 そんな君を見かねてママが、『最初は誰でも緊張するから気にしないで』って声を掛けていたね。

 背中を優しく撫でられているうちに、君は鍵盤に指を落とした。
 
 そこからつむぎ出される音に、にぎやかだった室内がしんとなった。恐らく君は緊張で気づいて無かっただろうけど。

 その場にいる人間みな、君のピアノに聞き惚れていたんだ。

 俺はママと違って音楽のプロじゃないけれど、君には才能があると思ったよ。

       ◆

「才能なんてありません」

 そんなの自分が一番分かってる。

「そうかな?俺は音楽に詳しくないからうまく言えないけど、確かにコンクールに出て優勝は出来ないかもしれない。だけど、音楽って違うだろう?どれだけ人を感動させるかだと思うんだ」
「感動させる?」
「上手くはないけど、何故か気になる。とかあるだろう?音楽だけじゃなくて、絵とかでも。実際、俺はある」