「どうぞ」






 その人は、笑って、ハンカチをくれた。






「ありがとうございます」






 ニコッと笑って、その人はまた空を見上げた。






 水面に映る星。綺麗すぎて、言葉も出ない。






 流星は消えた。涙も出なくなった。






「大丈夫ですか?」






「大丈夫です。 ちょっと思い出して」






 消えない傷跡。それは生々しく過去を思い出させる。






 この傷は一生消えない。そして、過去も消えない。






 その人は、優しく笑い、望遠鏡を手にして、空をうかがい始めた。






「見て」