「水上だって、嬉しそうにして、バッカみたい」


知らないよ、あんな奴。

ボディガードなんてさっさとクビになっちゃえ。



順番が来たので、同じ班の子たちに混ざって山道を歩き出してすぐ___。



「すべんない?手、つなぎましょーか、お姫さん」



いつのまにか私の横にいた水上が、にんまりと笑いながら私に手を差し出してきた。



「い、いらない。……私なんかより、他の女の子の手握ってあげればいいじゃない」



思ってもないことが、口からポンポン飛び出す。

こんなんじゃ、私が不貞腐れてる小学生みたいじゃない。


恥ずかしさに気づいても、それを訂正する勇気もなく。



「水上だって、女の子にチヤホヤされたいんでしょ」



ふん、とそっぽを向く。

なんのためにこの学校に転校してきたと思ってんのよ、なんて心の中で怒りながら。



すると、それまで何も言わなかった水上が口を開いた。



「俺にとってご主人様はたった1人なんだけどなぁー?」


「っ、だからなによ」


「お姫さんのこと守るためにここにいるんだけど、あっち行っちゃっていーの?」




やっぱり、ずるい。

いつもいつも、水上は私に選択肢を与えてくれない。




「す、好きにすれば」



ニヤニヤと私を見つめてくる水上にそっけなくそう言うと、水上は少しだけ嬉しそうにピアスをチャリンと鳴らした。





「ん、じゃーずっと隣にいますよ。お姫さん」




少しだけ。

ほんの少しだけ。



彼が私を選んだことに、嬉しいと思っている自分がいた___。