今まで、取り繕っていたこともあるけど、それはほんの一時期だけ。

すぐに面倒になって、自分自身に感情がないことを隠すことも無くなった。


そうしているうちに俺についた通称、それが


『血も涙もないキラー』


すげーダサいと思う。

なんで俺がこんなダサい通り名で活動しなきゃいけねーんだよ。って、何度も思ったけど、追い詰めた犯人や闇業界に幾度となく呼ばれるものだから、もう慣れたけど。


……だからこそ、それを夏芽に知られたら、避けられるんじゃないかって。


そんなしょうもないことが気になって、気になって。

一定の距離を保って、今まで接していたんだ。



「おい、こっちだ!」



そんな声が聞こえてジッと耳を覚ますと、背後、数十メートル先から複数人の足音。


4……いや、5人か。


俺は、すばやく物陰に隠れて様子を伺う。……まずい、死体を1人処理していない。

……バレるか……?


「……まあいっか」


俺は、ピストルを構えると、なんの躊躇もなく引き金を5回引いた。



……まずいな。



俺はうるさいからと切っていたインカムと電源を入れ直すと、北斗に繋ぐ。




「浮本組が複数名潜り込んでる。始末しろ」


《で、ですが……》


「あ?」



北斗はパーティー会場にいるようで、イヤホンの向こうからは人々の雑踏が聞こえる。

何か問題でもあるのか。



《浮本組の奴らはいません。誰ひとり……》


「馬鹿なの?パーティー会場にいるとは限らないんだよ」



相手は浮本組。

俺が破産させ、多大な借金を背負わせたとはいえ、人材がなくなったわけじゃない。


しかも、大量のヤクザなんだ。何をしでかすかわからない。


あの時の恨みをしっかりと拭き取っておけばよかったかもな。


俺は、あらかじめ用意しておいた緊急時のルートを辿って、パーティーホールがある建物に侵入した。