side 綾都



《瀬戸令嬢、見失いました》


「……何やってんの?おまえ帰ったらパンチね」


《えー……勘弁してくださいよ、水上さん》


「無理、さっさと探せ」



路地裏___。

俺はインカムに向かって冷静に話しかける。

本当に、何をやってるんだか。



《水上さんが出ればよかったじゃないですかぁ》



イヤホンの向こう側で、俺に講義をする弱々しい声。

俺は小さくため息をつくと、部下である北斗に向かって「あのね」と呟いた。



「立場上無理なんだよ。何度も言ってる」


《でも秘密警察部隊のトップだって言えば、すんなり入れたのに!》


「俺はトップじゃない。トップ"シークレット"だって、わかってる?」


《うぅ……はい》


「わかったらさっさと探せ。いざとなれば俺も行く」



そう吐き捨てると、ブチっとインカムの電源を落とす。

別に俺が秘密警察部隊だと言うことを夏芽にバレても、何も支障はない。


口止めのために釘を刺し、抵抗するようなら殺すまで。



___それなのに。



夏芽には、何がなんでもバレるわけにはいかない。そんな変なプライドが、俺の行動を阻んでいた。