――あれから5年の月日が流れた。

 エレノアは変わらず魔王と共に。彼が首から下げているペンダントの中に幽閉されていた。

「まったく、じぃの小言にも困ったものだな」

『………………』

「どうした? くっくっく……よもや限界か?」

『…………っ』

 魔王の指摘通りエレノアの魔力は底をつきかけていた。

 オーロラ状の結界は消えかけ、紫色の(もや)――瘴気が垂涎(すいぜん)を下げるようにして迫ってきている。

 このままでは瘴気に呑まれてしまう。そんな危機的な状況に陥っていた。

「仕方あるまい。ここは一つ貴様を励ましてやるとしよう」

 魔王は馴染みの玉座に腰掛けると、円を描くようにして何かを出現させた。

 黒い水晶玉であるようだ。ぼんやりと何かが映し出される。ここは草原か。

「見ろ。勇者だ」

『……ゆー……り……?』

 水晶玉がユーリの姿を捉えた。緑色のチュニック、黒いパンツ、茶色のブーツといったカジュアルな格好をしている。

『………………』

 紅髪がさらりと(なび)く。栗色の大きな瞳。その視線の先には見上げる程に大きな巨石があった。

『ユーリ……ああ、こんなに大きくなって……』

 あれから5年。ユーリは15歳になっていた。

 背は140センチから160センチ前後に。細身だが肩幅は広く、チュニックの袖から覗く腕にはしっかりとした凹凸が付いていた。

 あどけなくも凛々しさも感じさせる。そんな青年に成長していた。

『っ! レイ……っ!』

 ユーリの隣にはレイの姿もあった。見たところ息災であるようだ。その事実に安堵しつつ改めて彼に目を向ける。