「そう?って……もう。それにしても店まで作って、一年で私が戻らないって言ったらどうするつもりだったの」

「だから、二週間前に確認のため君を捕獲しに行っただろ。嫌な予感がしていてね」

「もう、信じられない……」

 彼は私の左手を握り、指輪の辺りを口元へ付けた。

「さあ、両親にあいさつしてもらうよ。逃げるなよ」

「逃げても無駄でしょ。周りから固められたわ。どこへ逃げるの?ここよりいいところがあるなら教えてください」

「何しろ僕が側にいるんだ、これ以上のところはないね」

「ずっと聞きたかったの。林さんとの縁談は大丈夫だったの?会社に不利益はなかったの?」