「何を今度はそんなにご機嫌が悪いんです?」

 椎名に朝から何度も言われる。四日前、彼女をあの場所に連れていき、喧嘩別れした。

 その後、名取に連絡した。場所は一週間だけ抑えてやるから嫌なら連絡をくれればすぐに解約すると伝えた。名取は了承した。

 確かに急ぎすぎたと少し反省しているが、ビジネスはチャンスをものにできるかが大事で一瞬を逃すと相手に負けることがある。

 多くの従業員やその家族を養う会社の舵を取ることは大きな責任が伴う。利益をあげることは何をおいても重要なのだ。

 自分の会社だったらと考えていたのは確かだ。彼女に言われたことは逐一ごもっともだった。

 最近こうやって頭から叱られたことがなかった僕は、正直その叱責を真に受けられなくなっていると自覚があった。