「すみません。願ってもない場所でここは素晴らしいです。でも……」

「わかったよ、名取が了承しないならすぐに解約しよう」

「そんな……待ってください、とにかく私からも名取さんに……」

「名取は絶対的な君の基準なんだな。よくわかったよ。でも僕は……君のなんだ?」

「……え?」

「いや……いい。戻ろう」

 彼は私を店で落とすと、あっという間に帰っていった。走り去る車を見ながら反省した。わざわざ忙しいのに時間を割いて場所を押さえ、あまつさえ自分から私を連れて行って場所を確認させてくれた。

 私は自分で場所を探すこともせず、それをしてくれた人に文句を言うなんて最低だった。後悔しても遅い。これできっと彼の資金援助は打ち切られるだろうと思った。