「結局のところ、右上位も左上位も、アメリカの世界戦略に、手を貸しているだけなのよね」
 笛美が言った。
「ああ。右上位はここぞとばかりに海外派兵の足掛かりをつくろうとしているけど、ビジョンを失った今の日本がやっても、単に利用されるだけ。一方の左上位も、日本以外の国は戦争しないなどと、事実とは違うことを言って、国民の目を湾岸戦争から逸らそうとしている」
「そうしたプロパガンダが、国民の政治への無関心、世界に対する無理解を引き起こしてるのに、その原因を作っている連中が『政治に関心がない』『世界に対して無知』などと国民を罵っている。まったく!頭に来ちゃう!」笛美は甲高い声で愚痴った。

 左右の筋違いな言論に錯乱されているうちに、日本はアメリカの言いなりになっていた。
 国連平和維持活動が合憲なのか違憲なのかゴタゴタやっている間に、アメリカは日本に対して130億ドルにのぼる戦費を捻出するよう要求してきた。またしても日本のお粗末行政が露呈した形だ。