一般のメディアでは、かつての行き過ぎた日本賞賛論は、あっという間に姿を潜め、かわりに日本懐疑論が主流になっていた。高度経済成長を終え、先進国の仲間入りを果たした日本が、いまだ進まない女性の社会進出、働くことしか能のないサラリーマン、排他的な社会システムで構成されていることは好ましくないという観点で、左上位の活動を歓迎していた。バブル経済のまっただ中にあることも手伝って、セカセカしてないで、ラクして生きようよ、といったニュアンスが強く感じられる報道姿勢だった。そして、国民に対し、権力に立ち向かう勇気を与えるべき責務を課せられた大新聞までもが”市民意識のない”日本人を見下し、罵る左上位のプロパガンダをそっくり垂れ流す始末だった。
「ちぇっ、最近は日本の悪口ばっかり。ひと昔とは大違いじゃないか。これも、陰陽説の法則だと言うんか!?」
 晴明はテレビを見ながらつぶやいていた。