しばらくして、晴明が、顔を上げた。
「よしっ!やる!!」
 晴明が力強く叫んだ。
「おおっ!晴明。頼もしいぞ。その意気だ。その調子で学校を粉々に打ち砕いてくれ!」
 横木が晴明の決心を称え、晴明を力づけさせた。
 そこを晴明が一言、深刻な表情をしてつけ加えた。
「ただし、覚悟してほしい。僕が呪文で学校を壊せば、お前たちは瓦礫の下敷きになるということを!」
 その言葉に、クラスは騒然となった。
「では、行くぞっ!!」
 晴明が、腹の底から息を吐き出すように、低い声でうなった。
「お、おい。俺たちまで犠牲にするつもりか!」
「まっぴらだぜ、そんなの。頼むからやめてくれ」
 クラスメートたちは、必死に晴明を止めようとしている。
 しかし晴明は真剣な表情で両手を前につき出し、うなり続けている。
「でぁぁぁぁぁぁ・・・・ぐぁぁぁぁぁぁ・・・・」
「は、晴明が、マジで学校を壊そうとしてるぞ!!うわぁぁ!逃げろっ!!」
 クラスのみんなが一斉に逃げ出した。他のクラスの人も逃げ出し始めていた。
 教室には晴明以外は、もう誰もいなかった。
 一人取り残された晴明はまだ、うなり続けていた。

 みんなが逃げていったのを見計らうと晴明は、突き出していた両手をひっこめ、瞬時に元の普通の表情に戻った。
 晴明は大きくため息をつき、教室の外に出た。廊下も完全に静まり返っていた。しかしよく見ると、誰か一人だけ残っているようだった。
 そこには険しい表情をした、笛美の姿があった。