ふと窓の方に目をやると細かい雨が降っていた。これが小糠雨というものだろうか。教科書をカバンに詰めながらそんなことを思っていると急に教室の出入口の方から奴の声が聞こえた。
「かほー!」
相変わらずゴリラみたいな声。
生憎、このクラスにかほは2人いるので一応無視してみる。
「無視すんなや!水篠かほおおお!」
やっぱり私だった。
仕方なく帰る準備をするスピードを上げて、ドアの方で腕組みをしながら待っている奴の元へ向かう。
「かほ遅い!早く帰るよ!」
腕組みをとくと、いきなり私の腕をからみとり引っ張ってくる。こいつはやけにボディタッチが多い。
「分かったから!」
そう言って腕を振りほどき、隣に並んで歩く。
「なーんか、傘をさすか、ささないか微妙に迷う雨だねえ。」
「たしかに。」
中学校でこいつと出会ってから、一緒に帰るようになって、もう3年目になる。永遠に話し続けるこいつに良いころのタイミングで相槌を打つだけ。たまにツッコミをする。いつもそう。話の内容はしょうもないものだけど、私はそれが楽で楽しかった。