確かこの人、入学式で代表だった人だよね?


「あの、ほんとにごめんなさい。」


「こちらこそよそ見をしていて、すまない。けがはないか?」


「はい、大丈夫です。では失礼します。」


「ちょっと待て!」


私はその人に腕をつかまれた。


「ちょっ、やめてください!」


そのとき、


「何やっているんですか!」


七菜が来て、間に入ってくれた。


「いくらイケメンでも那智に何かしたら許しませんよ!」


「いや、俺はあい…」


「那智行こう。」


「う、うん。」


玄関にたどり着いてからわたしは七菜にお礼を言った


「ありがとうね。七菜。」


「ううん。いいってことよ。」


「お礼に何かおごってあげる。」


「ほんと!やったー!」


「何がいい?」


「え~と、クレープ食べたい。」


「いいよ、行こう。」


彼が何か言いかけていたのは気になるが、私は七菜との今の時間を楽しむことにした。


「あ~、お腹がいっぱい。」


「満足した?」


「うん。満足!」


「じゃあ、暗くなってきたし帰ろうか。」


「うん、じゃあね~」


「また明日。」


七菜と別れて私は家に帰った。


ピロンッ


私のスマホから音がした。



『今日はごちです。明日迎えに行くから待っててね♪』



明日は休みだが、七菜と二人で遊びに行く約束をしている。



『わかった。道順大丈夫?』



『大丈夫だよん♪』



メールのやり取りをしているといつの間にか家が見えるところまで来ていた。

いつもだったら、そのまま歩いて家に向かうのだが私は歩を止めた。

家の前に人がいたのだ。うす暗くて顔までは見えないが、確実に人がいる。

そろりと近づいて声をかける。


「あのー、うちに何かご用ですか?」


ゆっくり相手の顔を見る。


「えっ」


家の前にいた人物は、今日ぶつかったあの人だった。


「あっ、やっと帰ってきた。」


「何の用ですか?」


「おばさんから聞いてないの?」


「?」


私には何のことかさっぱり分からなかった。


「…はい。」


「とりあえず中入れてよ。」


「…」


私はしぶしぶ玄関を開けて、中に招き入れた。


「おばあちゃんただいまー」


「あらあら、お帰りなさい。隣の子は…」


「今日からお世話になる天王寺廉です。」


「あ~。そうだったね。どうぞゆっくりしてください。」


「おばあちゃんどういうこと?私話聞いてない。」


「あら、そうだっけ。」


「うん。」


「彼は、私の友人の孫でね~引っ越すことになったとけど、一緒に行くことはできないから
うちで預かることにしたとよ。」


「でも私…」


「わかっとる。ちゃんとそこらへんのルールは言ってあるけん。」


「…わかった。」


「那智、ありがとね。」


「うん。」


「ということで、君の部屋は2階にあるけん那智案内してやって。」


「分かった。ついてきてください。」


「あぁ。」


「ここがあなたの部屋になります。」


「ありがとう。」


「あと私男が嫌いなので極力近寄らないでくださいね。」


私はそう言って立ち去った。

翌朝私は七菜と遊ぶため準備をしていた。
「どこか行くのか。」


「…友達と遊びに。」


「そうか。」


朝からあってしまうなんて最悪だ。


「朝ごはんは勝手に作って食べてください。それでは。」


「気を付けて…」


昨日かかわらないでと言ったのになぜあの人は私に話しかけてくるのだろうか。