「え⋯⋯? で、⋯⋯ですが、わたくしは義理の妹のヘンリエッタじゃありません。 ヘンリエッタのような日差しを呼び込む力は持っていません」
「我が国に必要なのは、日差しじゃない。雨だ——。そなたが嫁いできてくれてよかった。ようこそ、我が国へ、雨降り王女どの」
 リオ・ナバ王はにっこりと微笑んでフウルの手を取り、手の甲にそっと口付けをした——。

*****

「フウル王女さま、もうしわけありませんでした!」
 赤い髪をかきむしるようにしてミケールが大声で謝った。
「ミケールのせいじゃないわ、わたくしが悪いのよ」
 フウルは慌ててそう言った。
 フウルとミケールは寝室にいた。暖炉の前に座っている。雨に濡れた体を温めているのだ。
「いいえ、わたくしのせいです!」
 ミケールは、フウルが「処刑はいつ?」と聞いた時に曖昧に答えてしまったことを後悔しているらしい。そのせいでフウルが「自分は処刑される」と思い込んでしまったからだ。
 ミケールの子鹿のような可愛い丸い目に涙が浮かび、そばかすが浮かんだ頬を涙が濡らしていく。
「泣かないで、ミケール」
「許していただけますか?」