「フウル殿のナリスリア国にはまだまだ及ばないが、これからもっと緑豊かな国に育てていきたいと思っているんだ」
「あの⋯⋯」
「ん?」
「どうぞ、『殿』は外してください。フウルとお呼びください」
 そう言うとリオ・ナバ王はとても嬉しそうな顔をした。
「では、遠慮なく呼ばせていただこう。フウル?」
「はい?」
「——呼んでみただけだ」
「え?」
 国王の顔に少年のような悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。
 フウルも思わず小さく笑ってしまった。
 ——このままずっと馬車に乗っていたいわ。こうして陛下と話しを続けて⋯⋯、こうして一緒に笑って⋯⋯。だけどそんなことはありえないのね、わたくしは、もうすぐ処刑されるんだから⋯⋯。
 心の中でそっとため息をついた。