振り返ると、長身のたくましい男性が扉の前に立っていた。金髪の短髪に切れ長の目——彫像のようにハンサムなリオ・ナバ国王だ。
「お、おはようございます⋯⋯。はい、よく眠れました、お心遣いありがとうございます」
 慌てて膝を折って礼をした。
 国王の視線は昨日と同じようにピッタリとこっちを見つめて少しも離れない。
 ——どうしてこんなに見つめていらっしゃるのだろう? やっぱりわたくしの顔が変なのかしら?
 ドキドキが止まらなくなって困ってしまった。このドキドキは苦しくはなくて、それどころか心がウキウキと楽しくなるような、とても奇妙なドキドキなのだ。
 ミケールが王に言う。
「陛下——、王女さまは黒い服がお好きだそうなんですけど⋯⋯」
「黒い服は用意しなかったな。だが、王女——。あなたにはきっと明るい色が似合うと思う。俺が選んだ服は、嫌か?」
 昨日と違って口調が砕け、からかうような軽い響きがあった。引き締まった口元には笑みが浮かんでいる。
「でも、わたくしは⋯⋯」
 処刑される身で明るい服を選んでいいのだろうか?
 悩んでいると、リオ・ナバ王はクローゼットから服を選び始めた。
「このグリーンも美しいな——」
 独り言のように呟きながら、若葉色のドレスを取り出す。襟元に華やかな刺繍がほどこされた美しいドレスだ。それにピッタリと合う白い花模様の髪飾り。真っ白でたくさんのフリルが入った華やかなストール(肩掛け)も手に取った。
 そして、青いサファイアが飾られた美しいオメガ襟も⋯⋯。