「——つまり、あのオメガ王女にはなんの罪もないということだ」
「たしかにそうでございますね、聞いたところによると、フウル王女さまは幼いころから、義母のエリザベート王妃に激しい折檻を受けてお育ちになったようでございますし⋯⋯」
「折檻だと?」
「はい——。それだけではございません、フウル王女は貴族や大臣、それに国民からも虐げられていたらしいのです」
「どうしてだ? あのように美しいオメガ王女をなぜ虐げる? 素晴らしい『ギフト』の持ち主ではないか?」
 オメガ王女が来てから、ラドリア国には恵みの雨が降っている。これこそがラドリア国が待ち望んだ能力だった。
「それはやはり、義母である王妃の策略ではないでしょうか? 自分の息子を王位につけるためでしょう。フウル王女の実父である前国王は、エリザベート王妃に頭が上がらなかったようですから⋯⋯」
「なんということだ——」
 それであのような質素な服装だったのか⋯⋯。リオ・ナバの心は怒りでいっぱいになった。
「許せぬ」
 と呟いて、机の上の羽ペンを強く握りしめる。
 リオの手の中で羽ペンがバキッと折れた——。

続く(次はフウル視点に戻ります)