「はい。ですが、ナリスリア国の実権を握っているエリザベート王妃は、フウル王女の義理の母なのです。王妃にはヘンリエッタ王女という実子がいます。第二王女で、このヘンリエッタ王女が、数年前に我が国に嫁ぐと約束を交わしたオメガです」
「なるほど——。エリザベート王妃は、実子を王にしたいというわけか。よくある話だ。だが、我が国を騙すとは許せぬ——」
 リオ・ナバの顔が厳しくなる。
「⋯⋯では、処刑なさいますか?」
 サントスが身を乗り出した。
「処刑? 誰をだ?」
「我々を騙したフウル王女でございます」
「馬鹿なことを言うな!」
 リオ・ナバは思わず厳しい声を出した。
 サントスが、「もうしわけございません!」と頭を下げる。だけど顔には戸惑いが浮かんでいる。リオ・ナバの真意を測りかねているのだろう。
 リオは、また咳払いをしてから、続けた。