パッと手を引っ込めた。ドキドキしていた胸が、今ではもっと激しくなってしまって、もうほんとうに胸から心臓が飛び出すんじゃないかと思うぐらい、バクバクと鳴っている。
 ふたりの顔もものすごく距離が近い!
 ——なんて長いまつ毛かしら⋯⋯。
 リオ・ナバ国王のまつ毛はびっくりするほど長くて瞬きをする音が聞こえるかと思うほどだった。
 ガラス細工のような薄い色味の瞳には、暖炉の炎のオレンジ色の灯りが映っている。キラキラ⋯⋯、キラキラ⋯⋯。輝いていてとても美しい。
 思わずうっとりと見惚れてしまった⋯⋯。
「王女?」
「え? あっ! ⋯⋯お、お近くに寄ってしまい、失礼いたしました!」
「いや、そうではなくて——。かなりお疲れのようだ。もう休まれたらどうだろう?」
「は、はい! ——では、失礼します!」
 逃げるように飛び上がって立ち上がり、寝台へ登った。リオ・ナバ国王にじっと見つめられてしまうと、なぜだかものすごく緊張するのだ。
 ——どうしてあんなに見つめてこられるのだろう?
 変な顔をしているのかしら? どこか、おかしなところがあるのかしら?
 天蓋(ベッドの飾り布)の白いカーテンの中で考えた。
 布を透かしてリオ・ナバ国王が部屋を横切ったのが見える。
 ——あら? こっちに近づいていらっしゃった? 
 と思ったら、サッとカーテンが開いて国王の顔が見えた。
「わっ!」
 思わず驚きの声を上げてしまう。
「そんなに驚かなくても⋯⋯」
 クスクスと国王が笑った。男らしくハンサムな顔立ちは無表情だと威厳にあふれて少し怖いぐらい迫力がある。だけど笑うと少年のように明るく無邪気な雰囲気に変化した。
「王女?」
「は、はい!」
「慣れない場所だと眠れないだろう? 子守唄でも歌おうか?」
「え? 子守唄でございますか?」
 国王がわたくしに子守唄を歌ってくださる?