低くて、とても温かみのある声だった。聞いていると、「なにも心配なことは起こらない」とすら思ってしまうほどの力強さもある。国王は顔立ちだけでなく声も素晴らしく魅力的なのだ。
「はい、陛下!」
 赤毛の従者のミケールを先頭に侍女たちがサッと部屋から出ていく。
 暖炉の火が燃える寝室に、フウルと、リオ・ナバ王だけが残された。
 雨の音と暖炉の炎がパチパチと弾ける音が響く。
「この部屋は気に入ってもらえたかな?」
「は、はい——。とっても素敵な部屋です、ありがとうございます」
 答える声がかすれて細かく震えてしまった。王の視線がずっと自分から離れないので、ドキドキも止まらないのだ。
「もっと火を強めようか?」
 リオ・ナバ王が自ら暖炉の火を調節しようとする。
「え? 大丈夫です、わたくしが自分でやります!」
 慌てて暖炉に走って、炭をかき混ぜる火かき棒に手を伸ばす。
 その手が、王の手に触れてしまった。
「失礼いたしました!」