「はっ?!まじでなんもなかったの!ちゃんと濡れた髪で向かった?!」

「えっ、濡れた、髪?」

翌日『レモネードのレシピ教えて作戦』で得られた情報は特に何もなかったことを結衣に伝えると、何やらわけのわからないことを言い出した。

「いい?男っていうのは濡れた髪に弱いものなの。それプラスシャンプーの匂いなんか振りまいてごらんなさいよ!一発で惚れ─」

「おい結衣、それどこ情報だよ」

話に入ってきた濱谷くんが、目を細めてそう聞く。

「この間買った新刊」

「ま〜た少女漫画か」

濱谷くんは「結衣の言ってることデタラメだから当てにしないほうがいいぜ」と言いながら、

「で、どーだった?レモネードの人とは」と付け加えてきた。

「うん。またレモネードごちそうになったよ!でも…やっぱよくわかんない人かな。全く同じシロップ作られたらムカつくとか言い出すし……」

「なんだそれ」

「私だけ特別って言ってくれたけど、あの人にとってそういう言葉は特に意味が無いと思うし」

私がそういうと、結衣が「あーああいう遊んでる人は平気でいいそうだな〜」と頷く。

「あ!そうだ!俺いいこと思いついた!」

濱谷くんがパッと目を開いてそう言った。

「え〜はまやんのいいことってあてにならないんだけど〜?」

「結衣の少女漫画アドバイスより絶対効果的だわ!」

「はぁー?何よ。何思いついたのか言ってみなさいよ!」

腕を組んだ結衣にそう言われ、濱谷くんは、もう一つの作戦を話し出した。