「ほんとあの時は大騒ぎだったよ。はまやんがふざけて龍ヶ崎連れてきたりするから!」

「ふふっ、そんなこともあったね」

あの時は、夏穂さんも参加してくれて、最後は龍ヶ崎くんとすごく距離を縮めていたっけ。

夏穂さんが龍ヶ崎くんにちょっかい出してばっかりなだけだったんだけど。

「俺がなに?」

低くい声がしてふと顔を横に向けると、目の前に、ドンと龍ヶ崎くんが立っていた。

なにやら、あまり彼に似合わないものを持って。

「わ、龍ヶ崎くん!」

「うわ、龍ヶ崎、何だよそれ!」

濱谷くんがそう言うのも無理はない。
だって、龍ヶ崎くんが持っているそれ……。

龍ヶ崎くんの手には、ピンクのラッピングペーパーで包んだ色とりどりの可愛い花束。

卒業式だって言うのに、相変わらず着崩した格好の制服には、何ともまぁ、似つかわしくない。

「ん」

龍ヶ崎くんはそう言って、顔をそっぽに向けながら、私に花束を向けて。

え?これって……。

「わ、私に?!」

「ほかに誰がいんの」

「わっ、ありが……とうっ、」

龍ヶ崎くんには、一度好きだと言われて以来、この1年半、そう言うことは一切言われていない。

BBQの時に、矢吹さんにちょっとだけ態度が悪かったけれど。

「えっ、まじか、龍ヶ崎、まだアズのこと好きだったの?!」

結衣にそう言われた瞬間、龍ヶ崎くんの顔がほんのり赤くなる。